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「あなた、名前は?」


「あたしは……あれ?思い出せないや。まぁ、あたしは”あたし”よ!
そっちは?」


「私は……、お母さまやお姉さまからは、”シンデレラ”と呼ばれています。いつも灰にまみれているからって」


「シンデレラ?
シンデレラって、まさかアレ?舞踏会で王子様で、12時になったらさようならの?」


「よくわかりませんが、確かに今、お城では王子様の婚約者を探すためのパーディーをしていますよ」


「マジで?どーゆーこと!?
何? あたしトリップした? シンデレラの中にトリップした?」


「あの……いきなり騒ぎ出して、どうなさいました?体調がよろしくないのですか?
髪も黒いですし、肌が少し黄色いような気がするのですが……」


「いや、ウチの家族はみんなこうだから!
てかそうだよね。そもそも何であたしが普通に外人と話せちゃってるわけ? シンデレラって何語?英語?フランス?ドイツ?どこ!?」


「あの、本当に大丈夫ですか? ドレスもとても変わってますし。少し、足を露出しすぎなのでは?」


「いや、出してない方だし!
それに、ウチの高校は制服可愛くないけど、あんたの端切れパズルよりマシだから!」


「そうですか? 慣れれば動きやすいし、悪くないですよ」


「悪いに決まってるでしょ!バカじゃないの!?
あー、イライラする! 自分の名前思い出せないあたしにもイライラする!」