さっきの間抜けな返事の分を取り戻したくて、精一杯“優秀な店員”を装った。
まぁ、どんな店員が優秀なのかはよくわからないけど……。
できるだけ綺麗に微笑んで、できるだけ綺麗に声を出してみる。
「ありがとうございます」
軽く頭を下げてそう言うと、男の人はそのまま歩き出した。
クーポンをもらうためにわざわざ声をかけてくるなんて……
よっぽどウチのチェーンが好きなんだろうか?
あたしは、少し首を傾げながら顔を上げた。
「あのー……」
背後からまた声をかけられて、びっくりして振り返る。
「あ、どうなさいましたか? お客様」
そこには、さっき声をかけてくれた男の人がいて、あたしは目を見開いた。
「俺の……え!あ、いや! えっとー……」
“俺の”って何だ?
1人であたふたしだした目の前の男の人を見て、あたしはまた首を傾けた。
綺麗なラインの入った二重の目が、ぱちぱち動いてる。
何でまた声をかけてきたんだろう?
バイト中のあたしに声をかける理由なんて……クーポンがもっとほしいってこと?
「あ、クーポン券ですか? これ、手元にあるのはこの2枚だけなんですけど……よろしければどうぞ」


