俺のシンデレラになってくれ!


「どういうこと?」



ぐっと両手を上に突き上げた篤を見て、晴香が首を傾げる。



「俺ね、シンデレラシンデレラ言ってるけど、こうやってみんなで話すのって初めてなんだよ」


「まぁ、そうだろうな」


「シンデレラを語る男子学生なんていたら全力で避けるわー、あたし」


「……俺、そこまでメンタル強くないんだけど」



頬をひきつらせながら、篤が言葉を続ける。



「だから、こうやってみんなと話して、解釈がどんどん広がってくのが純粋に楽しいんだよなぁ。
今まで気付かなかったことに気付いて、どんどん深めていける感じ?それって、すごく幸せなことだと思わない?
1人でいる時間も好きだし、大切だと思うけど。まず1人で考えて、それから人と話して、考えを深める。そうやって自分と何かを成長させられる面白さ、もっと知ってもらいたいなー」



ひと段落。


篤はそんな空気を出していたけど、“誰に?”なんてことは聞けなかった。


こんな時にこそ手に取りたくなるカップの中身は、残念ながらもう空だ。



「だから、お前は結にずっといるわけだ」


「うん。あそこも俺は、自分の考えを深められるいい場所だと思ってるよ。
台本もらって、いろんな解釈が生まれてくのが面白い。みんな、いろんなこと考えてるんだよなぁ」


「そういえば、この前の授業であの子に会ったけど?由紀ってゆー子」