「……本当だ!何か矛盾してる!受け身だった。でも、『どうしてもやり遂げたい』って思って必死で舞踏会に参加した。お人よしで、実はアクティブなシンデレラ。
それが、舞踏会が終わりそうになった時に、自分の日常とのギャップに気付いた。脱げたガラスの靴を取りに帰らなかった。……まとめるとこうか?」
「すごく、ネガティブなシンデレラになってない?」
思ったことをそのまま伝えると、篤は眉間にしわを寄せて考え始めた。
ぶつぶつとつぶやく篤の言葉は、とてもじゃないけど全部聞き取れそうにない。
「よくわからないけど、それってシンデレラが現実を学んだ……そういうことかな?」
そっとつぶやいた雅也に視線を送ると、雅也が軽い笑顔をくれた。
「12時になることに気が付いたのと同時に、自分の飛び込んだ世界のすごさに気付いた。それから、自分が普段置かれている現実にも気づいた。
その現実を変えたいと思ってお城に飛び込んでみたけど、それを知られたら今の夢みたいな状況も全部消えるんじゃないかって、そんなことに気付いて不安になった自分にも気づいた。
それって、現実を思い出したシンデレラが、自分の計画と、自分自身の甘さを学んだ証拠なんじゃない?」
「それが、ガラスの靴を置いて帰ったことに繋がるの?」
「うん。自分の現実とガラスの靴には、全く関係がないって悟ったから。自分の状況を変えていくためには、何かもっと他の方法を考えないといけないって思ったんだよ。
12時で切れちゃう魔法なんて曖昧な方法じゃなくて、何時間でも、何日でも、ずっと使い続けられる本物の力を手に入れる必要があるんだって」


