「美砂の監視よろしく。……って、晴香、本気でこんなことしないよね?」
眉間にしわを寄せるあたしを見て、晴香がにっこりと笑った。
この笑い方よりも怖いものだって、あたしは他に知らない。
「んー?面白そうだから監視するー」
「ちょっと!」
「代わりに1000円なら貸してあげる」
「何で1000円!?もっと貸してくれてもいいでしょ!?」
あたしの所持金と合わせて4000円。
絶望的なことには変わりない。
「そんなことしたら、あたしが面白くないじゃない」
「鬼だ……」
大きく溜息を落としたあたしを見て、晴香は頬を緩ませた。
この間、高山さんから逃がしてくれた時は感謝したつもりだったけど……。
そもそも、どうして高山さんから逃げる必要があったのかが、あたしにはまだわかってないんだけど。
「ほら、早くしないと時間なくなるよー。あと55分」
「やっぱり鬼っ!」
何を言ってももう答えるつもりのなさそうな晴香を軽く睨んでから、あたしは駅を目指して立ち上がった。


