「省エネなんだか、ただのバカなんだか……。暇ならカラオケでも付き合って!何か今日は大声出したい気分なの」
「じゃあ、サークル行けば?」
「今日は別のサークルがコート占領する日なの」
そういえば、学内のコートは日替わりで順番に使ってるって話を、前に聞いたことがある気がする。
「マイクに通る、最強の声を披露してあげるんだから」
小さく呟いた晴香を見てから、手に持っていたマフラーを首に巻いた。
一気に風と隔離された首元に、何となくほっとする。
「あ、今朝さ、隣の駅のカラオケが室料半額ってメール来てたよ」
「じゃあそこで決定ね。リーズナブル上等!最少限の支出で最大限の利益を得るのが消費者の権利!」
「何それ? 経済の話?」
「そう。国語科のあたし達だって、他の領域に足を突っ込むことはできるんだから」
そこまで言うと、晴香はにっこりと微笑んだ。
「意外と簡単にね」
「ふーん」
わかったような、わからないような。
微妙な気分の中をふわふわしながら、やっぱり面倒で、あたしはそれ以上話を掘り下げるのをやめた。


