「うーん、やたらと通りのいい声を使いたがるようになるかな。舞台用の」
「酔ってもあくまでも“演劇”一筋なのね」
「あとは、簡単に言えばスキンシップが目立つようになるね」
スキンシップが目立つ……ね。
一体どんな状況のことなんだ、なんて想像して、やっぱり何となく、考えるのをやめた。
誕生日まであと3ヶ月近くあるあたしは、律儀なおじいちゃんとおばあちゃんのおかげでアルコールとは未だに縁がない。
お酒の匂いのする人と同じ電車に乗る時以外では、酔った人と同じ空間にいる機会もない。
「スキンシップって幅広いわね」
「まぁ、幅広くて説明が面倒な感じかなー?」
説明が面倒なくらい幅広いってどういうことだ。
浮かんできたそんな疑問を掻き消して、あたしは授業を受ける準備を始めた。
2
「今日って天気予報雪だったっけ?美砂が90分全く寝なかったなんて有り得ない」
「晴れだから、今日」
しかも、この時期の雪ならそこまで騒ぐ程でもないと思う。


