電話越しでの声でわかる。

すごく怒っていて
すごく心配してくれている。

「ごめん、寝てたみたい」

「お前な、心配するだろうが!」

「航ちゃんが私を怒るなんて初めてじゃない?」

「何バカなことを言ってるんだ。あれだけ電話しても繋がらないんだぞ。
心配するに決まってるだろうが」

「心配、してくれてたんだ」


「当たり前だろ、お前は…」

「お前は、何?航ちゃん」

「大事な、妹みたいなもんだからな」


うそつき。

キス、したくせに。

押し倒したくせに。

どこにも行くなって、言ったくせに。


「…雛?」

「航ちゃん、わたしほんとは寂しい」

「え?」

「なんて冗談!早く千鶴さんのとこに戻ってあげて」

「おい、雛!?」