「これはこれは大人の男性ですね!それでは自己紹介をお願いします!」



マイクが航ちゃんに向けられる。


今日だけは“倉田航ちゃん”だよ!


と心の中で祈ったのに...


「どうも、三橋航也です」


いきなりの自分の名字を言ってしまった!



緊張して忘れてるのかな?



「ちょっと航ちゃん!最初に言ったでしょう?」


だけど航ちゃんはわたしの言う事をちっとも聞かない。


「おやおや、紹介分には“お兄さん”と書かれてますが!?これは一体
どういう事なのでしょうか!?」


さすが司会者をやるだけはあるな、この人。


楽しげに進行してくれてる...でも


「すみません、実は雛の両親は今海外に住んでるんです、で、俺が兄がわりとして
今まで雛の傍にいたので、それで...」


「なるほど...では倉田雛さんの事はよくご存知で?」


「もちろん、こいつが赤ちゃんの時からずっと面倒見てましたから」