「なあ、響。お前、陸上部だったのか? この前も英二がそれっぽいことを言ってたけど……」


先にゴールしたはずなのに、何故か戸崎は後ろから追いかけてきた。


「あぁ。昔な。俺も短距離だった」


「へぇー。じゃあ、何でこっち来てからはやらないわけ?やっぱ勉強のため?

俺、響が勉強してるとこなんてあんま見たことないんだけど……」


確かに、戸崎の言う通りかもしれない。


前に勉強のためだと答えたことはあったけど、本当の理由はそうじゃない。


受験生だ、とか、特別進学クラスだ、とか言っても


勉強なんて授業の予習と復習、それに課題と小テストの勉強くらいしかしてなかった。


……まぁ、それだけでもかなりの勉強量になるけどな。


「ま、何でもいいだろ。少し怪我してさ、やめたんだよ。もう大したことないから」

「怪我って……。そうか、悪いこと聞いたな」

「いや、良いよ」


チャイムが鳴ったのと同時に、先生から集合の声がかかる。


戸崎と俺は、集合場所へと急いだ。