毎回のことながら、枝に登るために浮く感覚は不思議なものだった。


落ちないように体を安定させて、通学用の鞄を枝と幹に上手く引っ掛ける。


それから、俺はカズハに買ってきた物を渡した。


ひらがなの練習帳

カタカナの練習帳

線を書く練習帳


それに、ノート数冊とシャーペンとその芯。


スケッチブック、色鉛筆と、サインペンに下敷き。


そして、雑貨屋で買った、それらをしまっておくためのピンクのバッグ。


「す、すごい量じゃな……」


「あぁ。字の基本を練習するにはこの3冊。上手く書けるように何度も書きたかったらこっちのノート。

スケッチブックとか色鉛筆はおまけだ。絵を描きたくなった時にでも使ってくれ」


「この黒いのと板はなんじゃ?」


サインペン片手に、下敷きをぱたぱたとさせながらカズハが言った。


「黒いのはサインペン。ノートの表紙みたいにツルツルしたところに自分の名前を書いて使うんだ。

こっちの板は、こうやって紙と紙の間にはさむと、字が書きやすくなるから」


「ほー、そうなのか!なかなか便利なものあがあるんじゃのう」


カズハは、渡した物の1つ1つをまじまじと見た。