春、恋。夢桜。

昨日から何度も考えた。


でも、俺はやっぱり
梨恋には直接、何もしてやれないと思う。


だからその代わりに

“梨恋の精神的な負担を軽くするために何かできることはないか”

なんて、俺なりに考えてみた。


そして、思った。


梨恋があざを作った原因が童話に出てくる妖精が存在するかどうかだったんだから

妖精の存在を、せめて梨恋自身だけにでも証明できないか……と。


それができれば、それはいやがらせに耐える上で、梨恋の心の支えの１つになるんじゃないか、と。


「基本的には、できんじゃろう」

「基本的って？」


「もともと誰か１人としか関われんのじゃ。じゃから、いかなる理由があろうとも、それを曲げることはできんじゃろう。

じゃが、こればかりは試したことがないからのう……もしかしたら、できるやもしれぬ」


「本当か！？」


驚いてカズハを見ると、少し困った顔をされた。


「その人間が、キョーと何らかの深い共通点を持つ者であらねばならん……とは思うがな。
さすがに、わしの聞いている話が全て偽りとは思えぬし」

「深い、共通点……」


俺はまた、町の方へ向けた視線を向けた。

一息ついてから、それをゆっくりと、カズハに移す。


「例えば、俺の血縁者ならどうだ……？」