春、恋。夢桜。

「いくぞ?キョー!」


楽しそうに笑ったカズハは、とんっ、と地面を蹴って空中へ跳ねた。


そのまますぐに地面に落ちるかと思ったけど……

俺の予想を裏切るみたいに、カズハの体は上へ向かっていった。


それに引かれるように、俺の体も遅れて中へ舞う。


やがて、カズハは一本の枝に座った。

それと同時に、俺の体を一気に引き上げる。


想像してたような痛みも、何も感じないままにカズハの隣に座らされた俺は

ほんの少しの間、そのままフリーズした。


「キョー、どうしたんじゃ?顔が固まっておるぞ?そんなに驚くこともなかろう?」


大きく口を開けながら面白そうに笑うカズハの声で、はっとする。


「何言ってんだよ。降りるところは何度も見たことがあったけど、登るのを見たのは初めてだからさ。

びっくりしないわけがねぇだろーが」


「おっ?そうじゃったか?」

「あぁ。大体カズハは何をやるにも急すぎて……」

「別にいいじゃろうが!キョーに怪我をさせたわけでもあるまい。そんなことよりも、見てみろ!すごい景色じゃろ?」