春、恋。夢桜。

 

「反応しなければ、きっとそいつらは飽きて、次の標的を探す。そして、それを繰り返す」

「だったら……!」


「でも、いつか自分のしたことが愚かだってそいつらが気付いた時に、全部終わるから。

しかも、梨恋が無反応でいることが、そいつらに気付かせるきっかけになることもある」



俺は、梨恋の目をまっすぐ見つめた。


「だからそれまでは、我慢、できるか?」

「うん……」


もしかしたら、俺が今言っていることは、最低なことかもしれない。


『1人で悩んでいてはいけません』

『すぐに誰かに相談しましょう』

なんて言葉が飛び交う世の中に、完全に逆らってるかもしれない。


でも、俺が思うに、梨恋が受けてるのは、まだ軽いいやがらせ程度だ。


それなら、誰かに相談していることがバレた時、それが、いやがらせをする側の最大の薬になると思う。


やっぱりアイツは弱かったんだ。

やっぱり自分達は強いんだ。


そんな勘違いをさせる度に、奴等は“強く”なる。


悲しいけれど、これが現状だろう。

少なくとも、俺がわかる最大の範囲では……。