春、恋。夢桜。

 

「そしたら、みんなが『妖精なんかいるわけないのにバカじゃないの!?』って。『ガキくさい』んだって。

……梨恋、悔しかったから、このお話好きだから、『ガキくさくなんかないよ』って『妖精はみんなが大変な時に助けてくれるんだよ』って言ったの」



梨恋の頬に、涙の跡ができる。



「そしたら、……そしたら授業の後に手を捕まれて、教室にあったほうきの……、手で持つところで、叩かれたの。

『ほら、お前が大変な時でも妖精は来てくれないだろ』って」



俺は、言葉が出なかった。


確かに、梨恋の言うことには現実味がないかもしれない。

夢見がちだとも思う。


小学校の高学年では、童話に出てくる妖精の存在を信じる子なんて
いたとしてもほんの一握りのはず。


だからって、暴力を振るうのか……?


小学生のしわざとは言うけど、使ったものはほうきの柄。

硬い木だ。


かなりの痛かったはずだ。

……もちろん、精神的にも。


「他には?今日だけか?叩かれた以外に、何かやられたか?」

「叩かれたのは、今日が初めて。あとは……傘とか、靴とかを隠されたりする……くらい」


そう言って、梨恋は気まずそうに俯いた。


でも、気になることがもう1つある。

傷つけるかもしれないと思いながら、俺はまた口を開いた。