「響兄は、妖精っていると思う……?」
「よ、う……せい?」
「うん」
昔から童話をよく読んでいた梨恋だけど、いきなり「妖精がいるか」なんて聞かれるとは……
聞かれた方は驚くしかない。
しかも、この質問があざの話にどうつながるのか、検討もつかない。
でも今は、梨恋が話しやすい状況を作るのがベストだよな……
一瞬カズハが浮かんだけど、それを振り払うみたいに、俺は話を続けた。
「妖精はいると思う。それがどうしたんだ?」
「今日の国語でね、好きな本を紹介する時間があったの。だから、梨恋は『眠れる森の美女』を紹介したんだ」
それは、梨恋がよく俺に読むように言ってきた本だ。
男の声で読まれて嬉しいのかは疑問だったけど、微笑みながら聞く梨恋が可愛くて……
気付いたら内容もほとんど暗記してた。
「でね、その時に言ったの。お姫様とか王子様とかはもちろん好きだけど、最初に出てくる妖精が好きだって。
お姫様のピンチを助けてあげようとする、幸せにしてあげようとするところが好きって」
そこまで言った梨恋は、目にたくさんの涙を止めていた。


