袖の長い服でわかりづらくなってはいたけど、梨恋の左手首には青いあざがあった。
あざで血相を変える俺達は、何も知らない周りの人間から見れば少し異常かもしれない。
でも、梨恋は運動神経が良いから転んであざを作ることは、まずないだろうし……。
あざができているのは、腕の内側で、手首の少し上。
丁度腕が太くなりはじめる辺りにできているそれは
場所から考えても、転んで付けたものとは考えにくい。
でも、どこかにぶつけたものだとも思えない。
……丁度、手首を掴んで叩いたとでも考えるとしっくりくる。
「梨恋、もう一度聞く。このあざは、何だ?」
梨恋の両肩を掴んで、自分の方へ向かせた。
それでも、梨恋が答えてくれる気配はない。
ぎゅっと唇を噛み締めて俯く梨恋は、どこか悔しそうにも見える。
「俺に言いたくない訳が、何かあるのか?あざの理由が言えないなら、そっちを言ってみろ」
梨恋はそれでも少し迷ったみたいだった。
そして、深く息を吐いた後、ようやく口を開いてくれた。


