無表情で話すカズハ。

こいつが今、何を思ってるのかはわからない。


切ないのか、悲しいのか

もしくは、本当に何も思っていないのか……――――


想像を巡らせても、答えが出るはずはなかった。


「夢や願いというのは、願うだけでは叶わぬ。当たり前じゃろう?

何かを叶えたくば、実際に自らが動かねばならぬのじゃ」


カズハの声が、どこか力強くなった。


「じゃが、願うことは、実際に動くことではないからのう。

わしを含む何かに願掛けをしたところで、願いが成就することはない。

それでも、そんな噂話が広まるのは、人々がきっと『願って叶うならそんなに楽なモノはない』、『少しでも楽をして願いを叶えたい』と思っておるからじゃ」


「そっか……」


「じゃから、そのような噂話が出回り、好まれる。

本当は、それが夢だ、願いだということを忘れるくらい猛烈に行動するしか、夢を叶える道などないのにのう……」



それは、普段のカズハからは想像もできないような、大人っぽい発言だった。


表情、声色。

その全てが、月の光からしか照らされないこの場所に馴染む。


俺はただ、カズハを見つめて話を聞くことしかできなかった。