「食後に階段ってきついよな。教室が下りてこれば良いのに……」

「お前、4階で授業がある度に言ってるよな」

「高校の時みたいに長いエスカレーター付けるとかさ!」

「国立大にそんなもん望んでどうすんだ!」


昼休みも終わろうとしてるけど、まだまだ静かにはならない階段を潤がいっそう騒がしくする。


適当な席を2つ確保したところで、俺達は同時にため息を吐いた。


「ねぇねぇ聞いた?ここの近くに美大あるでしょ?そこにさ、すっごく絵の上手い1年生が入ったんだって!」

「何それ?有名なの?」

「うん。何かね、1年生なのにすごく綺麗な風景画を描くから、今やってる美大の美術展に、先輩に混ざって出展してるらしいよ」


前の席に座る2人の声が、自然に耳に入ってきた。


まだ授業の始まってない教室は、その大きさもあってかなり騒がしい。


隣にいる友達に聞こえるようにと一生懸命に張り上げられた声は、後ろの俺にもはっきりと聞こえた。


「すごーい!それって男?」

「ううん。背が低めの可愛い女の子だって」

「なんだぁ、残念!格好良い男子だったら絶対見に行ったのにー」


悔しそうに言う彼女の言葉に耳を傾けながら

俺はぼぅっ、と窓の外を眺めた。