春、恋。夢桜。

「阿呆!わしはそんな風に、人に迷惑を掛けるようなことはせん!」

「どうだか!」

「何じゃとっ!?」


懸命に俺の顔を見上げて怒った顔をする麗華が、可愛らしい。


やっぱり麗華といると、体の中から自然に笑いが込み上げてくる。


抑えきれなくなって笑い出すと

初めは面白くなさそうな顔をしてた麗華も、釣られて笑い出した。


こうやって過ごしてると、俺達を包み込む空間が、空気が

本当に月美丘にいた頃と変わってないことに気がつかされる。


それに何となくだけど、この先どんな状況になったとしても

これは変わらない気がする。


「あっ、……」

「どうしたんだ?」


突然、麗華が気が抜けたような声を出した。


「わしはもう、消えるみたいじゃ」

「え?」

「何だか視界がぼやっとし始めてのう。外側から順番に、視野が限られてきたんじゃ。視界が埋まっていく感じじゃ……」