春、恋。夢桜。

軽く苦笑いを浮かべる麗華の顔を、俺は静かに見つめた。


俺だって、いきなりすぎて格好良い台詞なんて言えない。

誰だってそんなもんだと思う。


ただ、何か。

例え格好良くなくても……――――


「格好良くなくても、良いんじゃ」


例え気の利いた言葉じゃなくても……――――


「気の利いた言葉じゃなくても良いんじゃ」


いつもの俺たちみたいに……――――


「いつものわし等のように馬鹿げた会話でも別に構わぬ。むしろ、それで良いのじゃ。

今日は、いつものわし等のように、好きなことを好きなだけ言って、笑って別れようではないか」


麗華は、満面の笑みでそう言った。


「そうだな……。じゃあ、麗華。お前から好きなこと言えよ。これからまた紅姫しか話し相手がいなくなるんだろ?

紅姫に煩いって嫌われないように、今のうちに言いたいことは全部言っておいた方が良いぞ」