春、恋。夢桜。

「月見丘の桜は、願いを叶えてくれるという噂のある桜なんじゃぞ?
その桜の精であるわしが、大切なお主が抱く願いのために、頑張らないわけがなかろう!」


麗華は、さっきまでのピリピリとした表情とは違う、穏やかな笑みを浮かべた。


「じゃから、お主はわし等を信じて……わし等に願掛けをしながら、自分のことを精一杯やっておれ!」


最高に眩しい笑顔でそう言ってくれた麗華に、俺はもう、反論するつもりもなかった。

むしろ、心の中は感謝で満たされてるような気までする。


「わかったよ。俺だってお前等に堂々と願掛けできるくらい、しっかり頑張ってやるよ。だから、そっちもしっかり頼むぞ」

「あぁ。わかっておる。当り前じゃろう?
わしは響よりも大人じゃからのう。その辺りは、お主と違ってしっかりと心得ておるぞ!」


麗華は、自慢げにそう言った。


さっきまでの説教モードは完全に終わったみたいだな。

遊びだした時の麗華の表情は、ものすごくわかりやすい。


「そうかよ。悪かったなお子様で。まぁ、お前だって十分小さいと思うけどな!」