春、恋。夢桜。

俺は大きく息を吸い込んだ。


自分が何を言いたいのか。

何を言うべきなのか。


そんなことは何1つわからない。

頭の中が混乱したままだった。


「あ、あのさ……」

「ちょっと待った!!」

「は?」


混乱したままの頭の中を順番に整理する意味も込めて、話を切り出そうとしたその瞬間。

麗華は俺の言葉を容赦なく絶ち切った。


「その前に、まずは確認しておきたいのじゃが……」


少しゆっくりと、何かを後ろめたそうに麗華が言った。


「何だよ」

「あのな……響は、わしのスケッチブックを見たか?」


いきなりすぎる発言に、俺は拍子抜けした。


麗華が言ってるのは、あのトートバッグに入ってるスケッチブックのことだと思う。


よく考えてみれば、俺はノートは全て見たけど

スケッチブックの中は見てない。


ノートを見た時点で、頭の中が麗華のことでいっぱいになった俺は

辛い現実から目を逸らしたくて、スケッチブックに触れられなかった。


「見てないけど……。それがどうかしたのか?」