春、恋。夢桜。

麗華はそこまで言うと一度言葉を止めた。


「その前に、響の話を聞かせてくれぬか?月美丘におった時みたいにな」


月美丘とは違って、景色も何も見えないこの空間で話すのは

何だか不思議な感じがする。


「何の話が聞きたいんだ?」

「そうじゃのう……。
まずは、梨恋の話を聞かせてほしい!元気にしておるか?」


無邪気にそう聞く麗華に、俺は何て答えれば良いんだろう。


潤から、梨恋が泣いてたことを教えられた今

梨恋は元気だと麗華に伝えるのは、躊躇われる。


「そうだな。小学校とかでは友達もできて、楽しくやってるみたいだぞ?
家でも明るく振る舞ってくれてるしな」


肝心なことは言わない。

だが、嘘はつかない。


そのレベルの返答を、俺は探した。



麗華に余計な心配はさせたくない。



そんな思いが、俺の頭の中を駆け回ったからだ。

……いや、実際は違うのかもしれない。