少し責めるような口調に変わった潤が、ゆっくりと顔をおろした。


そして、まっすぐに俺の目を見つめる。


「内容の重さに違いはあっても、大切なものを失う経験なら、俺にだってある。誰にだってある。
それが自分にとって重いものであればあるだけ、辛さが増すのだって当たり前だ」


潤の額に、力が入った。


「でもさ、ありきたりなセリフだけど、そこで何もできずに凹んでるだけじゃ駄目なんだよ。

それじゃあ、周りの人間に迷惑を掛けるだけで、何も良いことなんかない。
今、自分の周りにある大切なものにまで、辛さを味わわせるだけだ」


潤の言葉は、あまりにもストレートで、痛かった。


それは、本当にありきたりな言葉で状況だったと思う。

でも、ありきたりだからこそ強くて、わかりやすい。


「実際に、お前は今、梨恋ちゃんを泣かせてるんだぞ。きっと、親だって心配してるんだろうが……」


俺は、潤と違って梨恋が泣いてるところを見たわけじゃない。


でも、例え短い期間であっても

麗華に慕ってた梨恋だって、この状況を悲しまないわけがなかった。


それは、よく知っているつもりだ。


でも、知っていてもどうすることもできない俺は、一体どんな反応を見せれば良いんだろう。


この感覚は、足を怪我した時に感じたものと似てる。


そうは言っても、俺は結局

動かない体に従うことしかする気になれなかった。