教室から見える景色に桜が入らないことを、淋しがる奴もいた。


授業中などに何気なく教室を見回すと

窓の外を眺めながらため息を吐く奴もいて……


どれだけあの桜が大切に思われていたのか、よくわかった気がした。


そんな桜を、自分の所有物だからと言って勝手に切ることを承諾した町長は、果たして正しかったのか。


そんな、考えても意味がないような疑問が、俺の頭の中を駆け巡ることもあった。



授業の内容も、教室の中の会話も、自分に関係のあるようなものしか耳に入ってこない。


必要最低限しか、会話もしなかった。


もともとあまり良くなかったクラスでの俺の評判が下がったことは言うまでもない。


でも、そんなこともどうでも良い。


家でだってまともに口を開かなくなっていた。

ご飯や風呂の時くらいしか自分の部屋から出ることもなかった。


だから、初めは心配していた親だって
俺を放置している状態に、もうすでに慣れてきてる。


唯一事情を知ってる梨恋は、俺を気にかけてくれる。

でも、それにも反応を返す気になれなくて……


申し訳なさだけが募った。