春、恋。夢桜。

 

『普通ならば、役目を終えた花の精の中から、適応者を探すのですが……。

今回は、その中に適当な者が見つからなかったのです。そんな時、そなたの体が反応を示しました』


そう言うと、その方はそっと微笑みました。


『ですが、そなたのついていた桜の寿命はまだまだずっと先でした。
だから、力が暴走して、桜の木の寿命を早める働きが進んでしまったのでしょう』


悲しさうな顔を向けたその方を、私は静かに見ていました。


『それは、どういうことなのですか?』

『正直、私にもよくわかりません。こんなことは初めてなのです』

『そんな……!』


『いろいろな手を尽くしてみましたが、桜とそなたの状況が良くなるわけではありませんでした。

そこで、そなたを早急にこちらへ引き上げたのです』