『そなたに新しい役を授けます』
目の前の方は、そう言い放ちました。
地面に付きそうな程の黒髪に、若そうな容姿。
纏っていたのは、薄紫色の美しい着物。
頭に乗った金色のティアラが、とても似合う女性でした。
『そなたは、次の“紅姫”に選ばれました。
全ての花の精の仕事ぶりを見守り、全ての花の生息環境を管理するのが、そなたの役目です』
『どういうことですか?あたくしは月美丘にいたはずです!
あの桜は!?桜はどうなるのですか?あんな状態で放置してしまうなんて……』
『あれは、仕方のないことだったのです』
取り乱して叫んでしまったあたくしに
その方はゆっくりと言いました。
『私の命はもう長くは保たない。そこで、新たな“紅姫”を必死で探していたのです。
ですが、なかなか適当な精が見当たらなくて苦労しました……』
その方は少し表情を薄暗くしました。
しかし、またすぐに顔をあげて話を再開しました。
『そんな時に見つけたのが、そなたです』


