春、恋。夢桜。

  

それは、生贄のおかげで体調が回復する……というものではありませんでした。


もちろん、桜の木が本来の美しさを取り戻したわけでもありませんでした。



相変わらず悲惨な状態の桜の中で

あたくしの体は、いきなり光に包まれ始めたのです。



そして、そのまま半透明になった体を見つめながら、あたくしは固まってしまいました。


あたくしが花の精だった記憶は、ここまででおしまいです。


気が付くと、あたくしは今いる、この空間にいました。


そして目の前には、それまで見たことのない

偉いお方が立っていらっしゃったのです。