確かに、予定してた帰宅時間はもうとっくに過ぎてる。


でも、正直なところ

カズハともう少し話していたいと思う、自分もいる。


そうは思うけど……

久しぶりに走りに出た俺を、母親が心配してる可能性が高いのも事実だ。


「じゃあ、今日は帰るよ。でも、……また明日、な」


俺は、少し迷ってこう言った。


立ち上がってカズハを見る。

すると、とても優しい笑顔が返ってきた。


「楽しみにしておるぞ!」


微笑むカズハに背を向けて、俺は丘を下った。


十分に休んだおかげで、足は家を出た時の軽さを取り戻してる。



深さを増した夜。

さっきよりも冷たくなった空気が、肺に容赦なく入り込んできた。



静かな空には、満月が相変わらず、白く輝き続けていた……―――