「なんじゃろう……。上手くは言えんが、胸の奥のもやもやとした感じが消えんのじゃ……」


綺麗にすらすらと言い表わせない気持ちを

わしはゆっくりと話した。



紅姫様は、嫌な顔一つ見せないで、それを真剣に聞いてくれてる。


紅姫様の着る、長く、美しく広がった裾が特徴的な深紅の着物が、心地よく視界に入ってくる。


合わせられた銀と白の細い糸で紡がれた帯は、とても上品で、紅姫様によく似合ってた。


「それは、あなたがとても大切なことをやり残してきた印なのではないかしら?
心当たりはおありですの?」


紅姫様が、そう言って少し首をかしげた。

それに合わせて、まっすぐな長い黒髪がはらはらと流れる。


頭に乗せた銀色の王冠みたいな飾りが、しゃらん、と揺れた。