ベッドが窓際に置いてあるから、この姿勢だと窓の外が見える。



両隣を家に囲まれた俺の家から見る外の景色は、別に眺めの良いものでも何でもない。


日が沈んだ今の時間には、窓に映るはずの隣の家の明るい水色が、灰色に見える。


そんな中でも
何故だか、戸崎も俺も敢えて電気を付けることはしなかった。


「俺もさ、びっくりしたよ。桜がなくなってた時……。

あの丘って、澄月町長の私物なんだけどさ、一般公開もされてたから、俺等も昔はよく遊びに行ってたんだ。昔は春になると花見とかもやってたしな」


戸崎は、深く息を吐いた。

背を向ける俺からは、戸崎の表情は見えない。


「でもさ、俺が小学校高学年の頃かな。桜の枝がいたずらで折られてたことがあったんだよ。

結構な本数がやられててさー。結局誰がやったかはわからないままだったんだけどな……」