春、恋。夢桜。

 

どんな言葉で、どうやって聞くのが一番良いんだろうか?


散々悩んだけど、少しパニックに陥ってた頭の中で出てきた台詞は

結局はとてもシンプルで、短いものだった。


カズハは、一瞬固まったように見えた。

でも、すぐに得意げな笑みを浮かべて、凛とした態度で言った。


「わしは、この桜の木の精じゃ」

「桜の、精……?」

「そうじゃ!じゃが、わしの姿を実際にしっかりと認識して、こうして普通に会話をした人間は、キョーが初めてじゃ」


本当に妖精なんて存在するのか……?


カズハの話は、明らかに俺の……

それどころか、人間の理解を越えた話だと思う。


でも、あまりにもはっきりと、楽しそうに話すカズハを見ていると

反論する必要が無い気もしてくるから不思議だ。


「今日は、本当に綺麗な満月じゃ」

「え?」