春、恋。夢桜。

「仕事だよ。そんなもの見ればわかるだろう?わかったらさっさとどこかへ行ってくれないか?」


無愛想な返答に、思わず眉間に皺が寄る。


でも、そんな俺を気にすることもなく、大島は俺に背を向けて歩いて行った。


「ごめんね。あの人いつもあんな感じなんだよ」


大島をフォローするように、眼鏡の男が口を開く。


「何の、仕事をしているんですか……?」


俺は、眼鏡の男にそっと聞いた。


「あぁ。この丘にね、ホテルを作るんだ」

「ホテル?」

「そう。ほら、月美丘の周りって田んぼとか畑ばっかでしょ?その辺りを徐々に観光施設とか、ショッピングモールなんかを作っていく予定なんだよ」


両腕を広げた彼は、少し楽しそうにも見える。


「だから、今年から田んぼの方には水を張らないようにしてもらったり……。まぁ、田んぼを加工し始めるのはまだ10年も先の話だけどね」


照れ隠しでもするかのように、眼鏡の男は少しはにかんでそう言った。