「響、これは何じゃ?」


麗華は、ヘアゴムを左右に引っ張りながら言った。


ふわふわとした薄いピンクの毛に

所々シルバーのきらきらした毛が混ざった、小さめのものだ。


「髪に付ける飾りだよ。髪を縛る紐みたいな物。梨恋が麗華に、プレゼントだってさ」

「ぷれぜんと?」

「贈り物ってこと。麗華を喜ばせたくて、梨恋が必死で選んだらしいぞ?」


麗華は、ぱっ、と顔を明るくして笑った。


いつもと同じ、夜のジョギングの途中。

麗華に乗せてもらった枝の上で、今日梨恋に渡された手紙と2つのヘアゴムを、麗華に渡した。


麗華は、あれからものすごいスピードでひらがなとカタカナを覚えて

今では少しずつ、漢字も書けるようになった。


書き順なんかに間違いは見られる。

でも、何度も練習していくうちに、その文字はだんだんと上達していた。


もちろん、文字の上達に伴って、ノートやシャーペンの芯の消費量が多くなったことは言うまでもない。


だから、俺があげたトートバッグは、日に日にふっくらしていった。