「今日のパーティーは、お前の為のものだ、大祖父からの言葉だよ、『お前の好きに振る舞っていい』とのことだ」



「夏音、必ず印を身に付けておくんだよ?」




 お祖父様とお父様にかけられた言葉に

 わたしは驚いて二人を見た。



 24歳になる今まで、男女交際など厳禁

 男友達、同期にさえ

 二人で会うことを禁止してきた人達とは

 思えない言葉だったからだ。




「それは、今日会う方達と何があっでも治外法権と言う事ですか?」



「……大祖父の言葉だ、私達がそれを望んでいる訳ではないからな」




 複雑な顔をしたお父様が弁明する。



 そうよね

 仮にも実の父親に

 今夜は男と何があっても不問だとは

 さすがに言われたくない。



 いつもは、三つ編みにしてぐるりとまとめた髪を解き放ち、腰まで流れるようなウェーブにして、わたしの肌によく合う深い緑のドレスを(まと)う。ジュエリーは全てゴールドで揃え。靴の先まで完璧なコーディネート。



 何処から見ても

 深窓の令嬢の出来上がりだ。



 わたしは、気付かれないよう

 そっとため息をついた。