勘弁してくれると嬉しいです、と

 苦笑して、またゆっくりと歩き出す。





「……」





 やっぱり、あの日の朝

 あたしと生方はしていなかった。



 まだ短いけれど、きちんと向き合った

 あたしの中の生方と

 彼が一致してくれた。



 今は、その事実が嬉しくて……





「生方」





 あたしは、立ち止まって

 彼を呼んだ。





「はい?」





 屈託のない、やわらかい笑顔で

 彼が振り返る。



 それだけのことが、

 心が満たされるくらい嬉しいだなんて

 今までのあたしは知らなかった。



 だから……





「生方、……あたしのこと、好きになってくれてありがとう」





 あたしの言葉に

 ひと際大きく開かれた目が……



 大きく揺らいで

 泣きそうな笑顔に変わる 。



 でも、そのまま彼は

 ニカッと、やんちゃな顔で笑った。