生方に振り回されたあの日から
1週間経っていた――
「伊織、ナニこれ?」
「伊織ムチャクチャキレ~」
「えっ?」
大型出張催事の帰り
新幹線の前シートにいた可児とハルトが
こっちに乗り出す勢いで
スマホの画面を見せてきた。
そこには
同じヴェールに包まれた
花嫁と花婿が
幸せそうに笑い合う動画が見えた。
「……動画、アップされたんだ」
スマホ借りて
始めから動画を見てみる。
薄暗い廊下を歩く花嫁1人
扉が開いて光が降り注ぐ
中庭の扉の前に現れた花嫁を
振り返り息を飲む花婿
目を見開いたまま動けない。
恥じらう花嫁が
ブーケに顔を埋める。
大きなヴェールに包まれた2人
まるでプロポーズするように
片膝をつく花婿が
ブーケを持つ花嫁の手をやさしく 包む