鼓動が

 さっきより強くなった気がした。





「……」





 せ、先輩だって

 ちゃんとした男の人なんだもの。



 これは当たり前のことなんだよね?





「はい」





 アタシは返事をして

 先輩の部屋のドアを開けた。





「ちゃんと、覚悟して来ました」



「……」





 先輩は戸口に背を向けて

 机の前の椅子に座っていた。



 その背中を見ているだけでも

 緊張して

 声が震えてくる。





「せ、先輩のことが好きです、……アタシと付き合ってください」



「……」





 お守りのを持った左手を

 ギュッと、握りしめて

 アタシは、もう一度先輩に告白した。





「……」





 ほんの数秒の間でも

 ものすごく長く感じてしまう。





「……」



「……いいのか? 2年と3ヶ月、もしかしたらそれ以上、会社には秘密の付き合いになってしまうぞ?」





 それ以上?





「……はい、それでもかまいません」



「……」










 長い沈黙が続いた…――





 鼓動が全身で高鳴っている。





「……」





 先輩の背中を見つめたまま

 アタシは

 戸口から動けないでいた。