「……」





 苦虫を噛んだような

 先輩の表情は

 お世辞にも照れているとは言えなくて。



 不安になる。





「オレの方は、全く問題ないって言っただろ?」





 印南先輩は

 顔を横に向けたまま

 嫌そうな顔で言った。





「この条件は、ほぼ企画の部長が企画の社員みんなの為に考えた条件で、千川側にはまったくメリットがない、お前がのむ必要のない条件だし、お前がオレじゃなく営業部の男や他社の男を好きになれば何の問題もない話で、いつ恋愛しようが、結婚しようが子供を作ろうが自由なんだぞ?」



「……」



「今オレの気持ちを聴いて、お前の選択肢が狭まったら2年間以上の自由がなくなるかも知れない」



「……」





 あぁ、だから

 印南先輩はアタシに

 自分の感情をワザと伝えないんだ?



 アタシの自由の為?



 でも





「でも、そこには印南先輩がいません」





 不意打ち食らった顔で

 印南先輩の目が大きくなった。