やっぱり先輩のことが好きです。



 アタシは

 背中に回した手を

 もう一度強く抱きしめた。



 あきらめたくない

 そばにいたい。



 全部なかったことでいいから

 そばにいたい。



 どうすれば

 先輩と一緒にいられる?





「……千川」



「……は、ぃ?」





 先輩の腕がゆるんで

 身体が自由になる。



 あっ……。



 ボロボロに泣いた顔を

 心配そうに先輩が覗き込む。



 親指で涙をぬぐってくれて。





「部屋に帰ったら話がある、ちゃんと聴けるか?」





 ハナシ?





「……」





 お仕事の、かな?



 今日アタシ

 ボロボロだったもんな……。



 それでも

 先輩のマンションに戻れると言うだけで

 アタシの心は安堵に満ちていたから



 アタシは

 何も聴かずに頷いてみせた。