「……連れて行かれなくてよかった」





 あっ……。



 背中に回された腕が

 強くアタシの身体を引き寄せて

 息が苦しい



 飽和していた感情の決壊が

 一気に崩れる。





 震える、想い…――





 コワかった

 怖かったぁ

 コワカッタよぉ……。



 先輩の胸にしがみついて

 吐き出すように泣いた。



 あんな風にフラれて

 あんな風に出て行ったのに



 先輩はちゃんと来てくれた。

 助けてくれた。



 ごめんなさい

 ゴメンなさい



 先輩の鼓動が

 直ぐ近くに聞こえてくる。



 ものすごく速い……。



 硬くて広い胸の中

 先輩の身体が微かに震えていて



 彼を物凄く

 心配させていたんだと分かった。



 背中にまわした両手で

 ギュッとしがみつくように

 先輩を抱きしめる。





「……ゴメッ、…なさぃ」




 バカで

 先輩のお家出ちゃって

 いっぱい

 迷惑と心配かけたのに





 好き……。