「――…仕事、……が」





 先輩にとっての仕事が

 アタシにとって

 特別だったことが、ただ……





「えっ? 仕事?」





 ただ、哀しくて――





「……なんでも、ないです」





 この気持ちを伝えれば

 少しは楽になるのかな?





「何でもなかったら、泣かないだろう?」





 グッと先輩の手に力が入って

 先輩の真剣な目が

 アタシを捕らえる。





「っ!?」





 鼓動が

 思い出したように跳ね上がる。





「千川?」





 顔が、熱い

 鼓動で胸が苦しい……。



 もう、限界です。





「……離してください、心臓が、もたない」



「――…えっ?」





 アタシの言葉に

 先輩の手の力が緩む。





「アタシの気持ちは、仕事じゃないです」



「……千川?」





 本当は

 こんな気持ちで

 伝えたくなかったのに……。



 もう理性が飛んでしまって

 言うことを聞かない。



 そんな自分を遠くで見て

 もう1人の自分が

 笑っているような気がした。



 それさえも

 気にならなくなるくらい

 苦しくて

 楽になりたくて……。





「アタシが好きなのは、印南先輩なんです」