「会えてよかった、急に納期早められちゃって……、今から納品行って来るから帰り遅くなりますって、美知さんに伝えてもらえるかな?」



「はい、わかりました、他にお手伝いは大丈夫ですか?」



「うん、今日は平気かな?」



「いってらっしゃい、気をつけて」



「行ってきます、伝達宜しくお願いします」





 荒北先輩を見送ってから

 待っていてくれた愛羅先輩を見ると





「……」





 仕方ないなぁ、と言う顔で

 アタシを見た後





「じゃあ今度ゆっくり、美知さんと3人でディナーでも行こうねぇ~?」





 と、お姉さまな笑顔で言われた。





「は、はひ?」





 ぎゃ~っ!



 もっと逃げられそうにないヤツに

 なっちゃった?





「……」





 この時



 アタシが内緒にしたことで

 更に噂が別な方向に向かったのも



 噂が1人歩きする怖さも



 その時のアタシには

 全然わかっていなかった。





 この後――





 アタシは

 1人歩きした噂のおかげで

 一生分の経験を

 する事になってしまったんだ。