アタシに合わせて
ゆっくりと歩く草履の擦れる音。
ぼんやりと足元を照らす提灯の灯り。
重なるように
足を少し引きずった下駄の音が続く。
遠くから響く蛙の合唱。
無言で歩く
先輩とアタシ。
近くの草むらから聞こえる
夏虫の声。
つながれた手から伝わる熱と
体中で響く心臓の音。
火照った頬を
夜のひんやりとした風が撫でる。
先輩の浴衣姿の背中
ふと、見上げて
目に映る
月のない満天の星空が
キレイで
とても綺麗で……
泣きそうになる。
「……」
それらすべてが
頭の中でぐるぐると回って
眩暈がするほどで
先輩の手に引かれて
家に戻るだけで
いっぱいイッパイの夜だった。