「奇遇じゃん、あたしらも混ぜて?」





 先輩達は

 無言で肩をすくめて

 隣の席の荷物をどけてくれた。





「すいませーん、アイス・オレとアイスコーヒーをグァテマラで」





 席に着くなり

 美知先輩が嬉しそうに注文した。





「めずらしいね、同じ時間帯のランチなんて」



「まぁ、企画も大分落ち着いたしね」



「あとちょっとで盆休みだしな……」





 暑いのか、2人ともけだるい感じ。





「お盆かぁ、亜美ちゃんはお盆休みどこか行くの?」



「あぁ、……えっと、特にないです、友達の所に泊まりに行くくらいかな? 美知先輩はどこか行かれるんですか?」



「あたしは、実家帰んないと親がうるさくてね~、亜美ちゃんは大丈夫なの?」





 あっ……





「はい、平気です」



「いいなぁ、盆と正月だけは帰らないとうるさくて~」



「大変ですね」





 施設育ちだと言うことは

 加藤部長と印南先輩しか知らない。



 何気ない会話の切れ端に

 傷付くことはもうなくなったけれど。



 この前の夢の余韻が

 脳裏に焼き付いて消えてくれなくて



 胸の奥が鈍く痛む。