印南先輩は、特に迷うことなく

 あっ、と言う間に

 秋穂ちゃんのアパートの近くに

 車を止めてくれた。





「この辺か?」



「あっ、はい、そうです! ……よくわかりましたね?」



「あぁ、昔住んでたからな……」





 ドキッ

 知ってる町? 何か、ヤバい?





「そ、そうなんですか?」





 イヤ全然大丈夫

 ダイジョウブ……



 別に悪いことしてるワケじゃないし

 って言うか

 何かリアクションしないと!





「アタシ、まだ来たばかりで、あまりこの辺知らないんで、安いスーパーとか今度教えて下さい」





 へ、ヘンなこと言ってないよね?



 一人暮らしじゃないことも

 バレてしまいそうで

 全身から冷や汗が出た。





「あぁ、今度な……」





 印南先輩は

 いつもの面倒くさそうな顔で言った。





「印南先輩、送ってくれて、ありがとうございました!」