生方にフラれてから1ヶ月
まだ胸の奥に痛みはあるけど
ちゃんと笑って
みんなと話が出来るようになった。
「このまま夕食のあるお座敷に行こっか?」
「その方が嬉しいね」
「はい、OKです」
露天風呂に入っただけだから
まだ化粧も落としてないし
貴重品も持ってるから大丈夫。
後で、お土産チェックしよう。
「あっ、ちょっと部屋に忘れ物したから取って来るわ、先に行ってて?」
伊織先輩が
お風呂バックを探しながら言った。
「大丈夫ですか?」
一緒に行こうかな?
「うん、平気すぐ戻るから」
「じゃあ、先行ってるな~」
あぁ、なんとなく由木さんと
2人になるの避けてたんだけどな……。
わたしはこっそりため息をついて
由木さんの後ろを歩いた。
「遙花ちゃん、少し元気出てきたね?」
「えっ? そう、ですか?」
顔を上げると
やさしい笑顔でわたしを見下ろす
由木さんがいた。
「……」
忙しい中でも
この人だけは、わたしの変調と言うか
失恋に気付いてくれて
正直困った。
「よかった」