ほんの数十秒後、店長と話を済ませたシュンが、またそばに寄ってくる。
案内されるがままに休憩室に入ると、すぐに部屋を出て行こうとするから
「シュンっ」
離れたくなくて、思わず呼び止めてしまった。
「ん?」
振り返り見えたのは、優しく笑う瞳。
「…ううん、なんでもない」
シュンが優しいことは誰より、あたしがよく知ってるんだ。
迷惑かけちゃダメ。
バイトの邪魔、しちゃダメだ。
「そ?」
不思議そうに訊かれて、あたしは目を伏せたまま頷く。
本当はなんでもなくなんか、ない。
そんな本心に気づいてくれるはずもなく、遠ざかる彼の背中をただただ見送った。
ちょっとくらい、気づいてよね。
シュンは、約束忘れちゃったの?
クリスマスは二人で過ごそうって言ったのに。
独りぼっちの休憩室に、時計が時を刻む音だけが規則的に響いていた。
リズムに誘われるように、深い闇へと落ちて───


