別の旦那さま宛の封書には、理由が記されていた。
啓祐殿
母の本心を残します。
いつの日か、啓祐の眼に触れることを望みます。
祐里を連れて、桜川を散歩している途中で、旅の修行僧に出会いました。
祐里を一目見るなり跪いて、このお方は、神さまの御子でございます。
大切に育ててくださいませと、祐里に手を合わせました。
光祐が気に入って不憫で引き取ったばかりの娘で、にわかには
信じられませんでした。
しかし、祐里は、本当に神さまのような一緒にいると、
幸せな気分にしてくれる娘でした。
将来、祐里を光祐の嫁にしたいと思いました。
それ故、養女にしたいと申し出た啓祐に反対して、光祐とは戸籍を
別にする事にしました。
もし、桜河の家に縁があるとしたら、神さまの御子の祐里は、苦難を乗り越え、
必ずや光祐の嫁になってくれると信じています。
祐里が拾八歳になり、光祐と祐里がお互いに合意するのであれば、
結婚を許可します。
もし、祐里がそれより前に他家に嫁いでいた場合や光祐が結婚をしていた
場合は、この遺言はなかったものとし、弁護士に破棄を依頼しました。
即座に遺言書を開示しなかったのは、祐里の強運を試したかったのです。
当主である啓祐の意向を聞きもせずに、勝手な遺言書を残す母を
お許しください。
母は、いつまでも桜河の家が栄え、皆がしあわせに暮らせるよう心から
望んでいます。
祐里の身分が何になりましょう。
祐里の前では、そのような些細な事は、誰も問題にすることは出来ないと
思います。
どうか光祐と祐里が、桜河の未来を荷なって、しあわせでありますように
祈るばかりです。
濤 子
啓祐殿
母の本心を残します。
いつの日か、啓祐の眼に触れることを望みます。
祐里を連れて、桜川を散歩している途中で、旅の修行僧に出会いました。
祐里を一目見るなり跪いて、このお方は、神さまの御子でございます。
大切に育ててくださいませと、祐里に手を合わせました。
光祐が気に入って不憫で引き取ったばかりの娘で、にわかには
信じられませんでした。
しかし、祐里は、本当に神さまのような一緒にいると、
幸せな気分にしてくれる娘でした。
将来、祐里を光祐の嫁にしたいと思いました。
それ故、養女にしたいと申し出た啓祐に反対して、光祐とは戸籍を
別にする事にしました。
もし、桜河の家に縁があるとしたら、神さまの御子の祐里は、苦難を乗り越え、
必ずや光祐の嫁になってくれると信じています。
祐里が拾八歳になり、光祐と祐里がお互いに合意するのであれば、
結婚を許可します。
もし、祐里がそれより前に他家に嫁いでいた場合や光祐が結婚をしていた
場合は、この遺言はなかったものとし、弁護士に破棄を依頼しました。
即座に遺言書を開示しなかったのは、祐里の強運を試したかったのです。
当主である啓祐の意向を聞きもせずに、勝手な遺言書を残す母を
お許しください。
母は、いつまでも桜河の家が栄え、皆がしあわせに暮らせるよう心から
望んでいます。
祐里の身分が何になりましょう。
祐里の前では、そのような些細な事は、誰も問題にすることは出来ないと
思います。
どうか光祐と祐里が、桜河の未来を荷なって、しあわせでありますように
祈るばかりです。
濤 子

